2013年12月31日火曜日

小学生と高校生をトレーニングすること

今年最後の投稿は、私が担当しているU-8とU-18のチームの両方をトレーニングしてみて感じたことを書いていきたいと思います。

今年に入ってU-8とU-18のチームの両方でトレーニングする機会をいただいたのですが、去年までの1チームでトレーニングしていたときとは違う感覚がわいてきました。

(U-18の選手たちとの食事会)

それは、U-18の選手に対して、「なぜ、今になってこれが出来てないのか」、「これが出来ていれば失点しなかった、または得点できたはずだ」というネガティブな感覚と、「これをどこで習得したのか」、「どうやってこの感覚を手に入れたのか」というポジティブな感覚の2つなのですが、これらはどちらも彼らの育成がどう行われてきたかについての感情だったのです。

ここで具体的に何ができていないのか、という部分は今回の投稿の目的ではないので別の回にまわすとして、ここで言いたいことは、上のカテゴリーでトレーニングすることで、下のカテゴリーで身に付けてなければならないことが明確になるということです。
実はレバンテUDも、U-18のトップチームの監督陣には、U-15のBチーム監督、U-13のBチーム監督が含まれています。

私自身は、U-18で共通して出来ていないこと、出来ていることをきっちりと見分けることで、U-8の子供たちに対して注力しなければならない部分を見つけることができました。(U-18で共通して出来ていることはクラブとして意識している部分なのでほぼ自動的に育成段階で身に付くと考えています。もちろんU-18で出来ていることでも必要なことはトレーニングします。)

もちろん、U-8とU-18では年齢がかなり違うので、U-18に足りないもので、U-8でも出来ていないものを全てトレーニングしすることは出来ませんが、ある程度のことについては設定を調整することで実現できているので、細かいところに気を使いながらU-8のトレーニングを継続してきたいと思います。

日本ではなかなかこういった環境を手に入れるのはJ下部組織以外では難しいと思いますが、これはクラブ運営からすると選手育成、監督育成、また経済面においてもすごく良い影響があるのではないかと思います。

監督が勉強し、考え続けられる環境作りというのはとても大事だと実感させられた体験でした。


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さて、これが2013年、最後の投稿となります。皆さんの2013年はいかがだったでしょうか?

2014年も皆様にとって飛躍の年になるよう心よりお祈り申し上げます。

2013年12月8日日曜日

テクニックのミスに関する問題の解答例

今回は、前回の投稿で質問を投げさせていただいていたので、その解答例を書いていきたいと思います。
わざわざ例と書かせていただいたのは、各チームのプレーモデル(試合の進め方)によって、最も必要とされるテクニックは違い、それによって優先度も変わってくるはずだという理由です。ですので、今回は私が考える、レバンテUDが考えるあのシーンの中で最も修正したいテクニックのミスについて指摘していきたいと思います。

さて、問題のシーンをもう一度見てみましょう。

レアル・マドリードのシャビ・アロンソからベンゼマにパスが渡り、バレンシア相手に得点を取ったシーンです。
さて、見ていただけると分かると思いますが、この動画の中にはいくつものテクニックが使われています。例えば、トラップ、パス、ドリブル、フェイント、クリア、タックル等ですね。
では、どのテクニックに重大なミスがあったか?
それは、「クリア」です。

では、「クリア」に注目して、もう一度見直してみましょう。
誰か不自然な動きをしている選手はいませんか??

そう、センターバックのリカルド・コスタ選手です(得点者ベンゼマのマークについている選手)。では、何がミスなのか。
もちろん、彼、チームとしてのポジショニング等に問題があるという指摘はあるでしょうが、それよりも今回は彼が「クリア」の際に用いたテクニックについて、考えていきましょう。

まず、からだの向きを見てみましょう。映像の0:16のあたりで、からだはどちらを向いているでしょうか?
この時点で彼はボールとマークを見れるように良いからだの向きをしており、問題ないように思われます。(どちらの足が前に出ているか注目していてください)

その後、シャビ・アロンソからパスが出ます。
そして、彼は「クリア」の為に、右足を出してボールに触りにいくが、球足が早く追いつかずにベンゼマに渡り、ゴールに繋がります。

聡明な皆様はこの時点でもうお気づきかと思われますが、そう今回の問題点は「クリア」の足です。
右から来るボールに対して、右足でボールを触りにいくのと、左足で触りにいくのでは、足を伸ばした際に「腰の距離」だけ右足で触りにいくと損をしてしまいます。これが、「クリア」のテクニックなのです。さらに、ポジションをとっていた状況で既に左足が前に出ていて、右足よりも前にあり、より遠くに届く可能性があるもも左足だったはずです。

彼は右利きなのできっと、左から来るボールに対しては、右足で「クリア」に行くことでしょう。しかし、右から来るボールに対しては左足でいかない。もし、育成時代にきっちりと修正されていれば起こりえなかった失点だと言えます。(右利きの方は左からボールがあがってくることをイメージしてみてください。きっと右足のほうが遠くに届くことが分かると思います)

もちろん、右から来たボールに対して、右足でいく場面もあると思います。例えば、競り合いの場面で、相手よりも先にボール触らなければならないぎりぎりの時などです。しかし、今回の場面では、そうではなく事前に相手の位置も把握し、ポジションも適切な位置をとっていたはずなのできっちりと「左足でクリア」に行く必要があったと判断できます。
これが、先週の私の質問の答えになります。

いかがだったでしょうか?
こう考えると、「試合の場面に応じて適切なテクニックを使うこと」が重要だということに気がつかされます。

テクニックは状況の中で自動化される必要があり、それをトレーニングするには試合の状況を無視したオーガナイズでは意味がないことが今回の映像とそのミスを見て分かっていただけたかと思います。
要は、トレーニングの中できっちりと状況を設定した上で、説明し納得させて適切なテクニックを身につけなければならないということです。

指導者の責任は大きいですね(汗。。。)


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余談ですが、実は本投稿の裏の目的が「クリア」をテクニックだと認識してもらうことになったのですが、いかがだったでしょうか???
私自身、日本にいたときにテクニックと言われればトラップ、パス、ドリブルをイメージしていましたが、皆様に守備のテクニックもあるということに気がついていただければ幸いです。

詳しく知りたい方は、『誰にでもわかるサッカー説明書~テクニック編~』を観ていただけると分かると思います。(http://soccersetsumeisho.jimdo.com/
絶賛宣伝中!!!(笑)

2013年12月2日月曜日

技術(テクニック)、戦術、フィジカル、メンタルではどれが重要??

さて、先日のレバンテUD研修のテクニック編で問いかけられた質問がこれです。
皆さんはどうお考えでしょうか??


レバンテUDのテクニカルディレクターの方の答えは、『全部!!』

もちろんその通りですよね(笑)

ただ、その真意は次の言葉にあります。
近年スペインでは戦術とフィジカルに重きが置かれ、テクニックとメンタル面は置き去りにされていることがしばしばだった。パーセンテージでいえば、40%、40%、10%、10%といった割合である。ただ、我々はその10%の部分が試合を決めることが多いことに気がつき、最近はその10%に注目をして取り残さないように努めている。

とのことでした。そして、今回はその10%の片方であるテクニックへの取り組みについて説明をしていただきました。

意外だったのは、日本では戦術が足りないといわれ、レバンテUDではテクニックが足りないと思っている点。

では、彼らの考えるテクニックとはどういうものなのでしょうか?
ボールを正確に蹴ること、止めること??

きっとそれだけではないはずです。スペインで考えられているテクニックの分類、説明の詳細は坪井さん出版の『誰にでもわかるサッカー説明書~テクニック編~』を観ていただけると分かると思います。(http://soccersetsumeisho.jimdo.com/
(友人の本の宣伝ではなく、日本語でテクニックをきっちりまとめているものがないので。)

そして次に見せていただいたのがこの動画。
皆さんはこの中の重大なテクニックのミスに気がつきますか??
(ちなみに私は見逃しました。。。)

http://goo.gl/j4eYLc

最近レバンテではこういった試合(育成も含め)でのテクニックのミスを分析し、その修正のためにチームから何人か取り出して、グループで練習をしているようです。

さて戻りますが、この動画を観てあるテクニックのミスを見極めてみてください。真の答えはそれぞれのチームが一番重要だと考えるものなので、唯一の答えはないと思います。が、ミスはミスとして存在していますし、プロの世界だとこのテクニックのミスが決定的な場面を誘発してしまうものが隠れています。

このミスは育成時代に修正されなかったから起こったもので、きっちりと修正されていればこの失点は起こりえなかったはずです。(ヒント!)そういった意味でも、戦術、テクニック、フィジカル、メンタルに優先順位をつけていると見えなくなるものがありそうですね。

次回は、このテクニックのミスとその解説を行いたいと思います。